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揚 ようきん 琴 (Yang-chin) とは?
揚琴(ようきん)は中国の打弦楽器です。
起源はペルシャに発します。
台形の箱に張られた 60 ~ 180 本の金属弦を 2本の竹製のばちで打ち鳴らして演奏します。
調律を変えて多様な音階を作ることができます。
様々なサイズのものがありますが、120弦前後を持つものが標準です。
スチール弦とスチールに銅線を巻いた弦の二種類が用いられており、ひとつの音に対していずれかの弦が 2 ~ 5 本ひと組で張られています。
そして、それらが同時に打たれることで 共鳴を起こし、非常に余韻の長い、深く豊かな響きを生み出します。
現地では独奏のほか、ニ胡や笛などとの合奏、映画や京劇の音楽などで用いられています。
北京、上海、蘇州、台北、香港などで製造されています。
同型の楽器は世界中に見られますが、最近までは日本に伝わり定着した形跡は見当たりません。
History
西洋古典音楽、ジャズ、ポピュラー音楽、北インド古典音楽を学び、アジアの民族音楽の研究をすすめる中で、'84年頃に揚琴に出会いました。
その後、独学で調律と演奏を修得。
'87年より 揚琴のソロ演奏活動を開始。
以後、様々なジャンルのミュージシャン、舞踊家、朗読家、ヴィジュアル系アーティストとの共演、メディアやアーティストへの作品提供・出演、CD制作参加、CM音楽制作等を行なっています。
作・編曲も行なってます。
'94年 日本人としては初めての揚琴のソロアルバムを全国で発売しました。
演奏音源(揚琴独奏)
Yang-chin played & composed by Ryohei TOMOEDA
1st. Solo CD「揚琴〜Solo Yang-chin」
全オリジナル曲
©1994, KYOTO RECORDS
(現在は正規店舗では取り扱っておりません)
R. T. の演奏スタイル
当初はもっぱらオリジナル曲と即興演奏、セッションばかりでした。
が、その後世界の歌曲なども演奏するようになります。
R.T. の揚琴は北京製で、弦は126本あります。
(このページのトップにある画像は R.T. の揚琴とばちです。)
共鳴を活かすために、中国のスタンダードな調律とは異なり、7音音階で4オクターブ、60種類の音にセットされています。
また中心になる音列には、各音階音について二種類(スチール弦と銅弦)、計7本〜9本の弦が仕込まれています。
これにより、打弦の位置・角度を変えることで、同じ音でも三通り以上の音色を作り出すことができます。
ばちも手作りの独自のものです。
ばちの持ち方も中国式ではなく、インド・ペルシャ式です。
実は揚琴とは、中国音楽をまったく介さずに出会ったので、中国の曲を演奏することはほとんどありません。(次項参照)
ではありますが「瑶族舞曲」など、中国の曲もいくつかレパートリーにしています。
揚琴との出会い
あれはいつのことだったか、インド料理店でアルバイトをしていたときのことです。
店内のラジカセから、聴いたことがない美音が流れてきました。
それは「サントゥール」と呼ばれるインドの打弦楽器でした。
その音色に一目惚れ?してしまったその日から、何度もなんどもそのカセットテープを聴き、ますますサントゥールに魅せられていきました。
いつしか演奏してみたいと思うようになったのは、自然ななりゆきだったと思います。
友人がサントゥールの中国版(揚琴のこと)を持っていることを知ったのは、それから間もなくでした。
彼が使ってなかったその楽器を譲ってもらい、いよいよ揚琴との蜜月が始まりました。
2nd. Solo CD「Yoh-kin Solo Work 1 / SONGS」
世界の歌曲を編曲・演奏したものです。
©2000, Magnolia Music, Japan
(現在は正規店舗では取り扱っておりません)
揚琴との蜜月
揚琴と出会った当時はネットもなく、情報を手に入れるのはたいへん困難でした。
揚琴演奏の最初にして最大の難関であるチューニング(調律)も、手探りで身につけるしかありません。
自分なりのチューニングが出来上がるまで、二年間を要しました。
その間にばちも開発し、独自のスタイルがほぼ完成したのが1988年頃だったと思います。
こうして生まれた独自の揚琴サウンドを、その後わたしは "SOUND GRADATION = 音彩" と名付けます。
そして幸運なことに、その頃にはすでに物珍しさも手伝って、次々に演奏のご依頼をいただくようになってました。
様々なジャンルのミュージシャンともどんどん共演するようになり、ダンサーや朗読家、華道家、書家などとのコラボレーションにもたくさん携わりました。
それから
揚琴はその後、わたしをいろんな人と引き合わせ、いろんな所へつれて行ってくれます。
生活の糧ももたらしてくれるようになります。
そんな中で、それまで想像だにしなかった様々な音楽にも出合わせ、またわたしの中から引き出してくれました。
そして '93年にはとうとう、揚琴での創作活動のための "生きた静寂" を求めて、京都府下の山里へ移住することになりました。
このころからわたしは自分の揚琴サウンドを「静寂と自然との対話から生まれた音色」 "SOUND GRADATION = 音彩" と呼び、作曲、演奏を続けます。
山里暮らしはその後25年間つづきます。
すっかり揚琴に人生を翻弄されています。
魅力と難しさ
魅力はなんと言っても、その芳醇な響きです。
特に連打して共鳴が深まった時の音色には、どこか異次元へ連れて行かれるような感覚にさせられます。
もっともむずかしい点は、やはりチューニング(調律)だと思います。
気温・湿度の変化、打弦、衝撃などの影響をたいへん受けやすいので、チューニングが安定しているのは本当に短時間だけです。
ライブでは何度もチューニングを直しながら演奏を進めるので「チューニングの合間をぬって演奏している」とのジョークまで生まれてしまいました。
あと、とっても重たいこと . . .
チューニングが不安定なので、他の楽器と合わせるのにいつも苦労します。
しかし、他の奏者とチューニングがぴたりと合った時のサウンドの素晴らしさは、様々な苦労をすべて忘れさせてくれます。
LAKSHMI
1993年には、いっしょにライブ活動を続けていた民族楽器奏者5人のグループ「LAKSHMI」で、東京のレーベルから CD "Music Bazaar" を発売しました。(©1993, Green Energy, Inc.)
当時流行し始めていた「ワールドミュージック」「ニューエイジミュージック」というジャンルに押し込まれつつ、関西を中心に弾(はじ)けつづけ、その後ときどき江戸へ出稼ぎに行ったりもするようになります。
各国の民族楽器を駆使する LAKSHMI は、世界の民族音楽のエッセンスをブレンドしたオリジナル曲を、唯一無二のサウンドで聴かせるグループでした。
(いずれ音源もアップしたいと思ってます)
LAKSHMI is... Robbin Lloyd on Syakuhachi & World Percussions / Haruzoh Yamada on Bass, Kalimba & Vocal / Kenji Sakasegawa on Tabla / Kenji Inoue on Sitar / Ryohei TOMOEDA on Yang-chin
(次項「Iroiro-banashi」にエピソードの紹介)
Iroiro-banashi
旧ブログ「いろいろ噺」のカテゴリー「揚琴演奏的生活」に R.T. の揚琴演奏にまつわるエピソードというか笑い話をまとめてます。
一例) 初めて揚琴のCTを買ったときの悲話?
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